うらぶれて物な思ひそ天雲の
たゆたふ心我が思はなくに
- 歌の意味
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しょんぼりと沈み込んで物思いをしないでほしい。空の雲のように揺れ動く心など、私は持っていないのだから。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2816
詞書は前の歌に続き「問答」
しおれて思い悩んだりしないでほしい、空の雲のように揺れ動く心など私は持っていないのだからと、不安がる相手を慰め、変わらぬ心を誓う歌である。相手の心細さを思いやりつつ、自らの誠実さを伝えている。
問答の歌で、左注の「右二首」によって次歌と一組をなす。次歌は本歌の初句「うらぶれて」をそのまま受け、もう思い悩むまい、水無瀬川にも水は流れているというのだからと答えている。本歌が漂う雲を譬えに引くのに対し、次歌は川の水を引いて応じており、空と川との譬えが対をなしている。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「うらぶれて」は、しょんぼりと心がしおれて、の意である。「うら」は心の意で、心が力なく沈むさまをいう。次歌の初句にも同じ語が置かれている。
二句「物な思ひそ」は、物思いをしないでほしい、の意である。「な…そ」は禁止を表す形で、ここで二句切れとなる。
三句「天雲の」は、空の雲の、の意で、雲が漂うことから次の「たゆたふ」にかかる枕詞である。
四句「たゆたふ心」は、揺れ動いて定まらない心、の意である。「たゆたふ」は物が揺れ動いて定まらないこと、心がためらい迷うことをいう。
結句「我が思はなくに」は、私は思っていないのに、の意である。「なくに」は打消の助動詞「ず」のク語法に助詞「に」が付いた形で、心変わりなどしないという思いを込めて、相手を諭すように言い収めている。
うらぶる:心がしおれる、しょんぼりする
たゆたふ:揺れ動いて定まらない。心がためらう
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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ま日長く夢にも見えず絶えぬとも 我が片恋はやむ時もあらじ
- 次の歌
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うらぶれて物は思はじ水無瀬川 ありても水は行くといふものを