かくだにも妹を待ちなむさ夜更けて
出で来し月のかたぶくまでに
- 歌の意味
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せめてこうしてでも、恋しい人を待っていよう。夜が更けてから出てきた月が、傾くまで。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2820
詞書は前の歌に続き「問答」
夜更けに昇った月が傾くまで、せめてこうしてでも恋しい人を待っていようと詠む男の歌である。なかなか来ない相手を、夜を徹して待ち続けようとする一途な思いが、月の動きによって時の移りとともに描かれている。
問答の歌で、左注の「右二首」によって次歌と一組をなす。次歌は、木の間を移っていく月の光を惜しんで立ちめぐるうちに夜が更けてしまったと答えており、本歌の「さ夜更けて」「月」を受けている。月の傾くまで待つ側と、月を惜しんで夜を更かす側とが、同じ月を見ながら向かい合っている。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「かくだにも」は、せめてこのようにでも、の意である。「だに」は最小限の望みを表す副助詞で、逢えなくてもせめて待つことだけはという気持ちを表す。
二句「妹を待ちなむ」は、恋しい人を待っていよう、の意である。「な」は完了の助動詞「ぬ」の未然形で強意を表し、「む」は意志の助動詞である。「妹」は男が恋人を呼ぶ語で、男の歌であることがわかる。ここで二句切れとなる。
三句「さ夜更けて」は、夜が更けて、の意である。「さ」は語調を整える接頭語で、次歌の結句にも「さ夜更けにけり」と同じ語が見える。
四句「出で来し月の」は、出てきた月の、の意である。「し」は過去の助動詞「き」の連体形で、夜が更けてから昇った月をいう。
結句「かたぶくまでに」は、傾くまで、の意である。月が西に傾くまで待ち続けようとする思いを表し、倒置によって二句の「待ちなむ」の限度を後に示している。
いも:男性が恋人や妻を親しんで呼ぶ語
かたぶく:傾く
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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おしてる難波菅笠置き古し 後は誰が着む笠ならなくに
- 次の歌
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木の間より移ろふ月の影を惜しみ 立ち廻るにさ夜更けにけり