かくしつつあり慰めて玉の緒の
絶えて別ればすべなかるべし
- 歌の意味
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こうしてなんとか心を慰めながら過ごしているが、玉の緒が切れるように、すっかり別れてしまったなら、どうしようもないだろう。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2826
詞書は前の歌に続き「問答」
今はこうして時折の逢瀬に心を慰めながら過ごしているが、玉の緒が切れるように二人の仲が絶えて別れてしまったら、もうどうしようもないだろうと、別れを恐れる心を詠んだ歌である。今の仲を頼りなく思いつつ、それを失うことへの不安が率直に述べられている。
左注「右二首」によって次歌の第二千八百二十七首と一組をなす問いの歌である。次歌は、相手が紅の花であったなら袖に染め付けて持って行きたいと答えており、別れを恐れる本歌に対し、離れても相手を身に添えておきたいという思いで応じている。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「かくしつつ」は、このようにしながらの意である。「つつ」は継続を表し、今の逢瀬のありさまがしばらく続いていることを示している句である。
二句「あり慰めて」は、心を慰めながら日を過ごしての意である。「あり」は、ある状態のまま時を過ごすことを表し、満たされないながらも何とか心をなだめている様子を表す句である。
三句「玉の緒の」は、「絶え」にかかる枕詞である。玉を貫き通す紐が切れることから、二人の仲が絶えることを言い起こしている句である。
四句「絶えて別れば」は、すっかり絶えて別れたならばの意である。「別れ」は下二段動詞の未然形で、「ば」が付いて仮定の条件を表している句である。
結句「すべなかるべし」は、どうしようもないだろうの意である。「すべなし」は手段がない、どうにもならない意で、推量の助動詞「べし」が付いて、別れた後の途方に暮れる思いを予想している句である。
たまのを:玉を貫き通す紐。「玉の緒の」で「絶ゆ」などにかかる枕詞となる
ありなぐさむ:慰めながら日を過ごす
すべ:物事を行う手段、方法
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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玉敷ける家も何せむ八重葎 覆へる小屋も妹と居りせば
- 次の歌
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紅の花にしあらば衣手に 染め付け持ちて行くべく思ほゆ