紅の花にしあらば衣手に
染め付け持ちて行くべく思ほゆ
- 歌の意味
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あなたが紅の花であったなら、衣の袖に染め付けて、持って行きたいと思われる。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2827
詞書は前の歌に続き「問答」
相手が紅の花であったなら、その色を衣の袖に染め付けて、どこへでも持って行きたいと詠んだ歌である。離れていく身でありながら、恋人を自分の身から離さずにいたいという思いを、紅花染めの鮮やかな色に託している。
左注「右二首」によって前歌の第二千八百二十六首と一組をなす答えの歌である。仲が絶えて別れることを恐れる前歌に対し、別れても相手を袖の色として身に添えていたいと応じている。
また次歌の第二千八百二十八首は、同じ「紅の」で始まり、紅の深く染めた衣を詠んで譬喩の部立を開いている。問答の結びと譬喩の始まりとが、紅に染める衣という同じ題材でつながる配列である。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「紅の」は、紅花の意である。紅花は鮮やかな赤色の染料となる花で、恋人をその花にたとえている句である。次歌の初句も同じ「紅の」である。
二句「花にしあらば」は、花であったならばの意である。「し」は強めの副助詞、「あらば」は未然形に「ば」が付いた仮定の形で、かなわぬことと知りながら願う気持ちを表している。
三句「衣手に」は、衣の袖にの意である。袖は身に最も近く、常に身に添うものであることを思わせる句である。
四句「染め付け持ちて」は、色を染め付けて身につけ持っての意である。紅花で染めることに、恋人を自分の身にしみ込ませるように離さずにおく思いを重ねている句である。
結句「行くべく思ほゆ」は、持って行きたいと思われるの意である。「べく」は当然や意志の気持ちを表す助動詞「べし」の連用形、「思ほゆ」は自然と思われる意で、八音の字余りである。
くれなゐ:紅花。またその花で染めた鮮やかな赤色
ころもで:衣の袖
おもほゆ:自然と思われる
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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かくしつつあり慰めて玉の緒の 絶えて別ればすべなかるべし
- 次の歌
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紅の深染めの衣を下に着ば 人の見らくににほひ出でむかも