山川に筌を伏せて守りもあへず
年の八年を我がぬすまひし
- 歌の意味
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山の川に筌を仕掛けても、番人が見張りきれないように、八年もの長い年月を、私はひそかに盗み続けてきたことだ。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2832
詞書は前の歌に続き「譬喩」
山の川に仕掛けた筌の番を人が見張りきれないように、親の監視の目を盗んで、八年もの長い間ひそかに恋人のもとに通い続けてきたと詠んだ歌である。筌の中の魚をこっそり盗むことに、守られた娘との忍ぶ恋をたとえ、長年の秘めた恋をおどけた調子で打ち明けている。
左注「右一首寄魚喩思」によって、魚に寄せて思いをたとえた歌とされる。前歌の舟に続いて水辺の題材であるが、本歌は待つ恋ではなく、人目を盗んで続ける恋を詠んでいる。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「山川に」は、山の中を流れる川にの意である。「やまがは」と濁って読み、山あいを流れる川をいう句である。
二句「筌を伏せて」は、筌を川に沈めて仕掛けての意である。筌は竹で編んだ魚を捕る道具で、娘を大切に守る親の目をたとえている。六音の字足らずである。
三句「守りもあへず」は、見張りきることもできずにの意である。「あへず」は、しきれない意で、番人が見張りきれない隙をついたことを示している句である。
四句「年の八年を」は、八年もの長い年月をの意である。「八」は数の多いことを表し、長い間の忍ぶ恋であったことを示している句である。
結句「我がぬすまひし」は、私がひそかに盗み続けてきたことだの意である。「ぬすまふ」は「盗む」に継続の「ふ」が付いた語、「し」は過去の助動詞「き」の連体形で、連体形で言いさして詠嘆を込めている。
うへ:竹を編んで作った、川に沈めて魚を捕る道具
もる:番をする、見張る
ぬすまふ:盗むことを繰り返す、ひそかに盗み続ける
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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みさご居る洲に居る舟の夕潮を 待つらむよりは我れこそまされ
- 次の歌
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葦鴨のすだく池水溢るとも まけ溝の辺に我れ越えめやも