ま葛延ふ小野の浅茅を心ゆも
人引かめやも我がなけなくに
- 歌の意味
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葛の這う野の浅茅を、心のままに人が引き抜くことがあろうか、いや、ありはしない。私がいないわけではないのに。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2835
詞書は前の歌に続き「譬喩」
葛の這い広がる野の浅茅を、ほかの人が思うままに引き抜くことなどあろうか、自分がここにいるのだからと詠んだ歌である。浅茅を恋人に、それを引こうとする人を恋敵にたとえ、自分がいる以上、恋人を他人に奪わせはしないという自負と独占の思いを表している。
左注「右四首寄草喩思」によって、次の第二千八百三十六首から第二千八百三十八首までとともに、草に寄せて思いをたとえた四首の一首目とされる。前歌の木の実から草へと題材が移り、浅茅、菅、若菜と、草に寄せる歌が続く配列である。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「ま葛延ふ」は、葛が這い広がっているの意である。「ま」は美称の接頭語で、野の情景を描きつつ二句の「小野」を修飾している句である。
二句「小野の浅茅を」は、野の丈の低い茅萱をの意である。「小」は接頭語で、浅茅は恋人をたとえている句である。
三句「心ゆも」は、心からの意で、ここでは思いのままに、気ままにの意に解される。「ゆ」は起点を表す上代の格助詞である。
四句「人引かめやも」は、他人が引き抜くことがあろうか、いやないの意である。「め」は推量の助動詞「む」の已然形、「やも」は反語を表し、恋人を他人の手に渡さないという思いを強く示している。
結句「我がなけなくに」は、私がいないわけではないのにの意である。「なけ」は形容詞「なし」の古い未然形で、「なくに」が付いて、自分が現にここにいることを言い添え、上の句の理由を倒置の形で示している。
まくず:葛。「ま」は美称の接頭語
はふ:這う。蔓などが伸び広がる
あさぢ:丈の低い茅萱
- 出典
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万葉集
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大和の室生の毛桃本繁く 言ひてしものをならずはやまじ
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三島菅いまだ苗なり時待たば 着ずやなりなむ三島菅笠