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三島菅いまだ苗なり時待たば
着ずやなりなむ三島菅笠

歌の意味
三島の菅はまだ苗である。育つ時を待っていたら、着ずに終わってしまうだろうか、三島の菅笠を。
鑑賞
巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2836

詞書は前の歌に続き「譬喩」
 三島の菅はまだ苗であり、笠に編めるほど育つ時を待っていたら、その菅笠を着ることもなく終わってしまうのではないかと詠んだ歌である。まだ幼い少女を苗の菅にたとえ、成長を待つうちに他人のものとなり、自分の妻にできないのではないかという気がかりを表している。
 左注「右四首寄草喩思」によって、草に寄せる四首の二首目とされる。菅を笠に縫って着ることを妻に迎えることにたとえる趣向は、本巻の第二千八百十八首の「佐紀沼の菅を笠に縫ひ着む日を待つに年ぞ経にける」とも通い合う。また次歌も菅を詠んでおり、本歌の、菅の育つのを待つ側の思いと、次歌の、刈られたまま放っておかれる菅の側の思いとが並べられている。
 作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。

 初句「三島菅」は、摂津国三島に生える菅である。三島は今の大阪府高槻市や茨木市のあたりとされ、結句の「三島菅笠」と首尾で呼応している句である。
 二句「いまだ苗なり」は、まだ苗であるの意である。「なり」は断定の助動詞で、ここで意味が切れる二句切れである。年若い少女をたとえている句である。
 三句「時待たば」は、育つ時を待ったならばの意である。「待たば」は未然形に「ば」が付いた仮定の形である。
 四句「着ずやなりなむ」は、着ないで終わってしまうだろうかの意である。係助詞「や」は疑問を表し、「なむ」は完了の助動詞「ぬ」の未然形「な」に推量の助動詞「む」の連体形が付いた形で、「や」を受けて結ぶ係り結びである。
 結句「三島菅笠」は、三島の菅で編んだ笠である。体言止めで、初句の「三島菅」を繰り返して歌を閉じ、手に入れたいものを印象深く示している。

みしますげ:摂津国三島に生える菅
なへ:苗
すがかさ:菅の葉で編んだ笠
出典
万葉集
前の歌
ま葛延ふ小野の浅茅を心ゆも 人引かめやも我がなけなくに
次の歌
み吉野の水隈が菅を編まなくに 刈りのみ刈りて乱りてむとや