み吉野の水隈が菅を編まなくに
刈りのみ刈りて乱りてむとや
- 歌の意味
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吉野の川の隈に生える菅を、編みもしないのに、刈るだけ刈って、乱れたままにしておこうというのか。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2837
詞書は前の歌に続き「譬喩」
吉野の川の隈に生える菅を、笠に編みもしないで刈るだけ刈り、乱れたまま放っておこうというのかと、相手を責めた女の歌である。刈られた菅に自分をたとえ、契りを結びながら妻として迎えようとしない男への恨みと、心を乱される嘆きを表している。
左注「右四首寄草喩思」によって、草に寄せる四首の三首目とされる。前歌と同じく菅を詠むが、前歌が菅の育つのを待つ側の思いであるのに対し、本歌は刈られたまま捨て置かれる菅の側の思いであり、同じ菅を待つ側と待たされる側とで詠み分けた配列である。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「み吉野の」は、吉野のの意である。「み」は美称の接頭語で、吉野は今の奈良県吉野郡の地であり、吉野川の流れを思わせる句である。
二句「水隈が菅を」は、川の流れが曲がって入りこんだ所に生える菅をの意である。菅は笠などに編む草で、自分の身をたとえている句である。
三句「編まなくに」は、編みもしないのにの意である。「なくに」は打消の助動詞「ず」のク語法に「に」が付いた形で、笠に編むことに妻として迎えることをたとえている。
四句「刈りのみ刈りて」は、刈るだけは刈っての意である。同じ動詞を「のみ」を挟んで重ねる形で、刈ったまま放っておく相手の仕打ちを強調している句である。
結句「乱りてむとや」は、乱れたままにしてしまおうというのかの意である。「乱る」は乱す意の四段動詞、「てむ」は完了の助動詞「つ」の未然形に推量の「む」が付いた形で、「とや」の下に「思ふ」などを略して問い詰めている。
みぐま:川の流れが曲がって入りこんだ所
みだる:乱す。乱れたままにしておく
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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三島菅いまだ苗なり時待たば 着ずやなりなむ三島菅笠
- 次の歌
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川上に洗ふ若菜の流れ来て 妹があたりの瀬にこそ寄らめ