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川上に洗ふ若菜の流れ来て
妹があたりの瀬にこそ寄らめ

歌の意味
川上で洗う若菜が流れて来て、妹の家のあたりの瀬にこそ寄ってほしいものだ。
鑑賞
巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2838

詞書は前の歌に続き「譬喩」
 川上で洗っている若菜が流れ下って、恋人の家のあたりの瀬に寄りついてほしいと詠んだ歌である。流れて行く若菜に自分の身をたとえ、自然な成り行きのように恋人のもとへ寄って行きたいという願いを表している。
 左注「右四首寄草喩思」によって、草に寄せる四首の四首目とされる。浅茅、菅と続いた草の歌を若菜で結び、前歌の、乱されたまま放っておかれる嘆きに対して、本歌では恋人のもとへ寄って行きたいという願いが詠まれている。
 作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。

 初句「川上に」は、川の上流での意である。若菜を洗う場所を示し、そこから流れ下る道筋を思わせる句である。
 二句「洗ふ若菜の」は、洗っている若菜がの意である。若菜は春の初めに摘む食用の草で、自分の身をたとえている句である。
 三句「流れ来て」は、流れて来ての意である。若菜が川の流れに乗って下って行くさまに、恋人へ向かう心の動きを重ねている句である。
 四句「妹があたりの」は、妹の家のあたりのの意である。「妹」は男性が恋人を親しんで呼ぶ語で、目指す所を示している句である。
 結句「瀬にこそ寄らめ」は、瀬にこそ寄ってほしいの意である。係助詞「こそ」を受けて推量の助動詞「む」の已然形「め」で結ぶ係り結びで、恋人のもとに寄りつきたいという願いを込めている。

わかな:春の初めに摘む食用の若草
せ:川の浅く流れの速い所
いも:男性が恋人や妻を親しんで呼ぶ語
出典
万葉集
前の歌
み吉野の水隈が菅を編まなくに 刈りのみ刈りて乱りてむとや
次の歌
かくしてやなほやまもらむ大荒木の 浮田の社の標にあらなくに