愛しと我が思ふ妹を人皆の
行くごと見めや手にまかずして
- 歌の意味
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いとしいと私が思う妻を、世間の人々が道を行き過ぎるのを眺めるように、よそごととして見ていられようか。手枕として腕に巻くこともしないままで。
- 鑑賞
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巻第十二 正述心緒 2843
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
いとしい女を、行きずりの人のように眺めているだけではいられないと、共寝への強い思いを打ち出す男の歌である。反語によって、ただ見ているだけの恋への焦りを示している。
作者の柿本人麻呂は、持統天皇、文武天皇の朝廷に仕えた宮廷歌人である。本歌は左注により柿本人麻呂歌集から採られた歌とわかるが、人麻呂自身の作か、人麻呂が書き留めた歌かについては説が分かれる。
初句「愛しと」の「愛し」は「うつくし」と読み、いとしい、かわいいの意である。本巻の第二千九百十四首も「愛しと思ふ我妹を」と歌い出し、同じ語で恋人への思いを示している。
二句「我が思ふ妹を」の「妹」は、男性が妻や恋人を親しんで呼ぶ語である。
三句「人皆の」は、世間のすべての人々をいう。
四句「行くごと見めや」は、道を行く人を眺めるように見ていられようか、の意で、「めや」は推量の助動詞「む」の已然形に係助詞「や」が付いた反語である。
結句「手にまかずして」は、腕を枕として巻くこともなく、の意で、共寝もしないままで、という含みを持つ。四句と倒置の関係にある。
いも:男性が妻や恋人を親しんで呼ぶ語
まく:腕を枕として巻く、共寝する
- 作者
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柿本人麻呂歌集
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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我が心ともしみ思ふ新夜の 一夜もおちず夢に見えこそ
- 次の歌
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このころの寐の寝らえぬは敷栲の 手枕まきて寝まく欲りこそ