忘るやと物語りして心遣り
過ぐせど過ぎずなほ恋ひにけり
- 歌の意味
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恋しさを忘れられるかと、人と語り合って気を晴らし、やり過ごそうとしたけれど、思いは過ぎ去らず、やはり恋しくなってしまった。
- 鑑賞
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巻第十二 正述心緒 2845
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
恋の苦しさを紛らそうと人との語らいで気を晴らしてみたが、かえって思いが募ったことを歌う。忘れようとする努力とその挫折を、動詞の繰り返しで端的に言い表している。
作者の柿本人麻呂は、持統天皇、文武天皇の朝廷に仕えた宮廷歌人である。本歌は左注により柿本人麻呂歌集から採られた歌とわかるが、人麻呂自身の作か、人麻呂が書き留めた歌かについては説が分かれる。
初句「忘るやと」は、恋しさを忘れられるかと思って、の意で、「や」は疑問の係助詞である。
二句「物語りして」は、人と話をすることで、恋の苦しさを紛らそうとする試みをいう。
三句「心遣り」は、心を晴らすこと、気晴らしの意である。
四句「過ぐせど過ぎず」は、やり過ごそうとしてもやり過ごせない、の意で、同じ動詞を重ねて思いの消えない様子を印象づけている。
結句「なほ恋ひにけり」の「にけり」は完了と詠嘆で、やはり恋しく思ってしまったことだ、という気づきの嘆きを表す。
こころやり:気晴らし、心を慰めること
すぐす:やり過ごす、過ごさせる
- 作者
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柿本人麻呂歌集
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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このころの寐の寝らえぬは敷栲の 手枕まきて寝まく欲りこそ
- 次の歌
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夜も寝ず安くもあらず白栲の 衣は脱かじ直に逢ふまでに