夜も寝ず安くもあらず白栲の
衣は脱かじ直に逢ふまでに
- 歌の意味
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夜も眠れず、心も安らかではない。この白い衣は脱ぐまい、直接あなたに逢うまでは。
- 鑑賞
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巻第十二 正述心緒 2846
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
眠れぬ夜の不安を述べたうえで、恋人に逢うまでは衣を脱がないと誓う歌である。衣を脱がずに過ごすことで、相手への操と逢瀬への一途な期待を示している。
作者の柿本人麻呂は、持統天皇、文武天皇の朝廷に仕えた宮廷歌人である。本歌は左注により柿本人麻呂歌集から採られた歌とわかるが、人麻呂自身の作か、人麻呂が書き留めた歌かについては説が分かれる。
初句「夜も寝ず」は、夜も眠れないことをいい、「も」を重ねて苦しさを並べ立てる。
二句「安くもあらず」は、心が安らかでない意で、初句とともに眠れぬ夜の不安を畳みかけ、二句切れとなる。
三句「白栲の」は、楮などで織った白い布をいい、ここでは「衣」にかかる枕詞である。
四句「衣は脱かじ」の「じ」は打消の意志を表し、衣を脱ぐまい、の意である。
結句「直に逢ふまでに」の「直に」は、夢や使いを介さず直接に、の意である。本巻の第二千九百十九首や第二千九百五十九首にも同じ趣の結句があり、直接の逢瀬を待つ心が繰り返し歌われる。
しろたへ:楮などの繊維で織った白い布、「衣」「袖」にかかる枕詞
ぬく:衣を脱ぐ
- 作者
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柿本人麻呂歌集
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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忘るやと物語りして心遣り 過ぐせど過ぎずなほ恋ひにけり
- 次の歌
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後も逢はむ我にな恋ひそと妹は言へど 恋ふる間に年は経につつ