ぬばたまのその夢にだに見え継ぐや
袖干る日なく我れは恋ふるを
- 歌の意味
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夜に見るその夢にだけでも、あの人は続けて現れてくれるだろうか。涙で袖の乾く日もないほど、私はこんなに恋い慕っているのに。
- 鑑賞
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巻第十二 正述心緒 2849
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
涙で袖の乾く間もないほど恋い慕っているのだから、せめて夢には続けて現れてほしいと願う歌である。前歌の「夢にだに」を受け、夢を頼みとする思いが続いている。
作者の柿本人麻呂は、持統天皇、文武天皇の朝廷に仕えた宮廷歌人である。本歌は左注により柿本人麻呂歌集から採られた歌とわかるが、人麻呂自身の作か、人麻呂が書き留めた歌かについては説が分かれる。
初句「ぬばたまの」は、夜や黒いものにかかる枕詞で、ここでは夜に見る「夢」へと続く。
二句「その夢にだに」は、せめてその夢にだけでも、の意である。
三句「見え継ぐや」は、続けて現れてくれるだろうか、の意で、「や」は疑問を表す。ここで三句切れとなる。
四句「袖干る日なく」は、涙で濡れた袖が乾く日もなく、の意で、泣き暮らす恋の苦しさをいう。仮名の行では「干る」を「ふる」と読む。
結句「我れは恋ふるを」の「を」は逆接を含む詠嘆で、これほど恋しているのに、と夢にさえ現れない相手を恨む気持ちを込める。
ぬばたま:ヒオウギの黒い実、「夜」「黒」などにかかる枕詞
みえつぐ:続けて姿が見える
ふ:乾く、上代の上二段動詞
- 作者
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柿本人麻呂歌集
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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直に逢はずあるはうべなり夢にだに 何しか人の言の繁けむ
- 次の歌
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うつつには直には逢はず夢にだに 逢ふと見えこそ我が恋ふらくに