人の見る上は結びて人の見ぬ
下紐開けて恋ふる日ぞ多き
- 歌の意味
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人の目に触れる上着の紐はきちんと結んでおいて、人の見ない下紐は解いて、あの人を恋い慕う日が多いことだ。
- 鑑賞
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巻第十二 寄物陳思 2851
詞書「物に寄せて思ひを陳ぶ」
人目に触れる表の紐は結び、見えない下紐は解いて恋人を待つ、人目を忍ぶ恋の姿を歌う。下紐が解けると恋人に逢えるという俗信を踏まえ、表と裏の対照で秘めた思いを描いている。詞書の「物に寄せて思ひを陳ぶ」は、衣や紐など具体的な物に託して恋の思いを述べる部立であることを示す。
作者の柿本人麻呂は、持統天皇、文武天皇の朝廷に仕えた宮廷歌人である。本歌は左注により柿本人麻呂歌集から採られた歌とわかるが、人麻呂自身の作か、人麻呂が書き留めた歌かについては説が分かれる。
初句「人の見る」は、人目に触れる、の意で、三句の「人の見ぬ」と対句をなす。
二句「上は結びて」は、上着の紐はきちんと結んでおいて、の意で、表向きは何事もない様子を装うことをいう。
三句「人の見ぬ」は、人目に触れない、の意で、初句と鮮やかな対照をなす。
四句「下紐開けて」は、下着の紐を解いて、の意である。下紐が解けると恋人に逢えるという俗信があり、ひそかに逢瀬を待つ心を表す。
結句「恋ふる日ぞ多き」の「ぞ」は係助詞で、連体形「多き」で結ぶ係り結びである。そうして恋い慕う日が多い、と人目を忍ぶ恋の日々をいう。
したひも:下着の紐
うへ:表、ここでは上着
- 作者
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柿本人麻呂歌集
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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うつつには直には逢はず夢にだに 逢ふと見えこそ我が恋ふらくに
- 次の歌
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人言の繁き時には我妹子し 衣にありせば下に着ましを