礒の上に生ふる小松の名を惜しみ
人に知らえず恋ひわたるかも
- 歌の意味
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磯の上に生えている小松のように、浮き名が立つのを惜しんで、人に知られないように恋い続けていることだ。
- 鑑賞
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巻第十二 寄物陳思 2861
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
浮き名が立つのを恐れ、人に知られないよう秘かに恋い続けることを歌う。左注に引く或本では「岩の上に立てる小松の名を惜しみ人には言はず恋ひわたるかも」とし、四句を「人には言はず」として、口に出さない忍ぶ恋の姿をより明確にしている。
作者の柿本人麻呂は、持統天皇、文武天皇の朝廷に仕えた宮廷歌人である。本歌は左注により柿本人麻呂歌集から採られた歌とわかるが、人麻呂自身の作か、人麻呂が書き留めた歌かについては説が分かれる。
初句「礒の上に」は、岩の多い水辺の上に、の意である。
二句「生ふる小松の」は、磯に生える小さな松をいい、初句とともに「名」を導く序詞とされるが、そのかかり方については説が分かれる。
三句「名を惜しみ」は、名が立つのを惜しんで、の意で、「み」は原因を表すミ語法である。
四句「人に知らえず」は、人に知られずに、の意で、「え」は受身の助動詞「ゆ」の未然形である。
結句「恋ひわたるかも」は、恋い続けることだ、の意で、「わたる」はずっと…し続ける意を添える。
いそ:岩の多い水辺
こひわたる:恋い続ける
- 作者
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柿本人麻呂歌集
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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八釣川水底絶えず行く水の 継ぎてぞ恋ふるこの年ころを
- 次の歌
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山川の水陰に生ふる山菅の やまずも妹は思ほゆるかも