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山川の水陰に生ふる山菅の
やまずも妹は思ほゆるかも

歌の意味
山の川の水辺の陰に生えている山菅の名のように、やむことなくあの子が思われることだ。
鑑賞
巻第十二 寄物陳思 2862

詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
 山の川辺の陰にひっそり生える山菅を序として、やむことなく恋人を思う心を歌う。「やますげ」と「やまず」の音の響き合いが、思いの絶えなさを印象づけている。
 作者の柿本人麻呂は、持統天皇、文武天皇の朝廷に仕えた宮廷歌人である。本歌は左注により柿本人麻呂歌集から採られた歌とわかるが、人麻呂自身の作か、人麻呂が書き留めた歌かについては説が分かれる。

 初句「山川の」は、山の中を流れる川をいう。
 二句「水陰に生ふる」は、水辺の物陰に生えている、の意である。
 三句「山菅の」までが、同音の繰り返しで「やまず」を導く序詞となる。本巻の第三千六十六首も「山菅の止まずや恋ひむ」と同じ技法を用いている。
 四句「やまずも妹は」は、やむことなくあの子は、の意である。
 結句「思ほゆるかも」は、自然と思われることだ、の意で、「ゆ」は自発を表す。

やますげ:山に生えるスゲ、一説にヤブランとも
みづかげ:水辺の物陰
作者
柿本人麻呂歌集
出典
万葉集
前の歌
礒の上に生ふる小松の名を惜しみ 人に知らえず恋ひわたるかも
次の歌
浅葉野に立ち神さぶる菅の根の ねもころ誰がゆゑ我が恋ひなくに