我が背子を今か今かと待ち居るに
夜の更けゆけば嘆きつるかも
- 歌の意味
-
愛しいあの人を、今来るか今来るかと待っていたのに、夜が更けていくので、嘆いてしまったことだ。
- 鑑賞
-
巻第十二 正述心緒 2864
詞書「正に心緒を述ぶ」
今来るか今来るかと恋人を待ちわびるうちに夜が更け、嘆きに沈む女の歌である。人麻呂歌集の歌群に続き、作者を記さない正述心緒の歌がここから始まる。
作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。
初句「我が背子を」は、女性が恋しい男を呼ぶ語で、女の立場の歌である。
二句「今か今かと」は、今来るか今来るかと、の意で、繰り返しが待ちわびる心の高まりを表す。
三句「待ち居るに」は、待っていると、の意である。
四句「夜の更けゆけば」は、夜が更けていくので、の意で、待つ時間の経過を示す。
結句「嘆きつるかも」は、嘆いてしまったことだ、の意である。本巻の第二千八百八十五首も同じ結句で結ばれている。
まちゐる:座って待ち続ける
なげく:ため息をつく、嘆く
- 作者
-
作者未詳
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
浅葉野に立ち神さぶる菅の根の ねもころ誰がゆゑ我が恋ひなくに
- 次の歌
-
玉釧まき寝る妹もあらばこそ 夜の長けくも嬉しくあるべき