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かくばかり恋ひむものぞと知らませば
その夜はゆたにあらましものを

歌の意味
これほどまでに恋しく思うものだと知っていたなら、あの夜はもっとゆったりと過ごしていただろうに。
鑑賞
巻第十二 正述心緒 2867

詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
 逢った夜を慌ただしく過ごしてしまったことを、恋しさの募る今になって悔やむ歌である。反実仮想によって、取り戻せない一夜への未練を述べている。
 作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。

 初句「かくばかり」は、これほどまでに、の意である。
 二句「恋ひむものぞと」は、恋しく思うものだと、の意で、「ぞ」が強調している。
 三句「知らませば」は、「ませば」と結句の「まし」が呼応する反実仮想で、もし知っていたならば、の意である。本巻の第三千三十八首第三千百四十三首も「かく恋ひむものと知りせば」と同じ発想で歌い出している。
 四句「その夜はゆたに」の「ゆたに」は、ゆったりと、の意で、逢った夜を慌ただしく過ごしたことへの悔いを示す。
 結句「あらましものを」は、過ごしていただろうに、の意で、後悔の思いを込めている。

こふ:恋しく思う、慕う
作者
作者未詳
出典
万葉集
前の歌
人妻に言ふは誰が言さ衣の この紐解けと言ふは誰が言
次の歌
恋ひつつも後も逢はむと思へこそ おのが命を長く欲りすれ