逢はなくも憂しと思へばいや増しに
人言繁く聞こえ来るかも
- 歌の意味
-
逢えないことさえつらいと思っているのに、ますます人の噂がうるさく聞こえてくることだ。
- 鑑賞
-
巻第十二 正述心緒 2872
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
逢えないつらさに加えて、人の噂がいよいよ激しく聞こえてくることを嘆く歌である。逢えない悲しみと世間の目との二重の苦しみが述べられている。
作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。
初句「逢はなくも」は「逢はず」のク語法で、逢わないことも、の意である。
二句「憂しと思へば」は、つらいと思っているのに、の意である。
三句「いや増しに」は、ますます、いっそう、の意である。
四句「人言繁く」は、人の噂がうるさく、の意で、本巻に繰り返し現れる人言の主題がここでも歌われる。
結句「聞こえ来るかも」は、聞こえてくることだ、の意で、つらさに追い打ちをかける噂を嘆いている。
ひとごと:世間の人のうわさ
- 作者
-
作者未詳
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
人言の讒しを聞きて玉桙の 道にも逢はじと言へりし我妹
- 次の歌
-
里人も語り継ぐがねよしゑやし 恋ひても死なむ誰が名ならめや