- 歌の意味
-
確かな使いがいないので、私の心を使いとして送ったのだ。あなたの夢に見えただろうか。
- 鑑賞
-
巻第十二 正述心緒 2874
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
信頼できる使いがいないので自分の心そのものを使いとして送ったが、あなたの夢に現れただろうか、と問いかける歌である。魂が身を離れて恋人のもとへ通い、相手の夢に現れるという考え方を背景とした、機知に富んだ発想である。
作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。
初句「確かなる」は、信頼できる、の意である。
二句「使をなみと」は、使いがいないので、の意で、「なみ」は「なし」のミ語法である。
三句「心をぞ」の「ぞ」は係助詞で、四句の連体形「遣りし」で結ぶ。
四句「使に遣りし」は、自分の心を使いとして送った、の意で、ここで四句切れとなる。
結句「夢に見えきや」は、あなたの夢に見えただろうか、と問いかける。本巻の第三千百十一首も同じ結句で結ばれ、夢に現れることを恋の証しとしている。
つかひ:使者、手紙や言葉を届ける人
やる:送る、行かせる
- 作者
-
作者未詳
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
里人も語り継ぐがねよしゑやし 恋ひても死なむ誰が名ならめや
- 次の歌
-
天地に少し至らぬ大夫と 思ひし我れや雄心もなき