古典和歌stream

里近く家や居るべきこの我が目の
人目をしつつ恋の繁けく

歌の意味
人里の近くに家を構えて住むべきだろうか。この私の目が人目をはばかってばかりいて、恋しさがしきりに募ることよ。
鑑賞
巻第十二 正述心緒 2876

詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
 人里の近くに住んだため人目をはばかってばかりで、恋しさが募るばかりだと嘆く歌である。住まいの場所までを悔やむところに、人目に縛られる恋の窮屈さが表れている。
 作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。

 初句「里近く」は、人里の近くに、の意である。
 二句「家や居るべき」の「や」は疑問で、家を構えて住むべきだろうか、と自問し、住むべきではなかったという悔いを含む。ここで二句切れとなる。
 三句「この我が目の」は六音の字余りで、この私の目が、の意である。
 四句「人目をしつつ」は、人目をはばかり続けて、の意で、三句の「目」と「人目」とが響き合う。
 結句「恋の繁けく」は「繁し」のク語法で、恋しさがしきりに募ることよ、と詠嘆している。

ひとめ:他人の見る目
作者
作者未詳
出典
万葉集
前の歌
天地に少し至らぬ大夫と 思ひし我れや雄心もなき
次の歌
いつはなも恋ひずありとはあらねども うたてこのころ恋し繁しも