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み空行く名の惜しけくも我れはなし
逢はぬ日まねく年の経ぬれば

歌の意味
空を渡っていくように広まる浮き名も、私は惜しくはない。逢わない日が重なって、年が過ぎてしまったので。
鑑賞
巻第十二 正述心緒 2879

詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
 逢えない日が重なり年月が過ぎた今となっては、浮き名が広まることも惜しくはない、と開き直る歌である。噂を恐れる気持ちよりも、逢えない苦しさの方がまさってしまった心境を述べている。
 作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。

 初句「み空行く」は、空を渡っていくように、の意で、噂が遠くまで広まるさまを表し、「名」にかかる。
 二句「名の惜しけくも」は「惜し」のク語法で、名を惜しむことも、の意である。本巻の第二千九百八十四首も「名の惜しけくも我れはなし」と同じ表現をもっている。
 三句「我れはなし」は、私にはない、の意で、ここで三句切れとなる。
 四句「逢はぬ日まねく」の「まねく」は数多く、の意で、逢わない日が重なって、の意である。
 結句「年の経ぬれば」は、年が過ぎてしまったので、の意で、理由を後から示している。

な:評判、ここでは浮き名
作者
作者未詳
出典
万葉集
前の歌
ぬばたまの寐ねてし宵の物思ひに 裂けにし胸はやむ時もなし
次の歌
うつつにも今も見てしか夢のみに 手本まき寝と見るは苦しも