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うつつにも今も見てしか夢のみに
手本まき寝と見るは苦しも

歌の意味
現実にも今すぐ逢いたいものだ。夢の中でばかり、袖を枕にして共寝すると見るのは苦しい。
鑑賞
巻第十二 正述心緒 2880

詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
 夢の中でばかり共寝するのを見るのは苦しく、現実に今すぐ逢いたいと願う歌である。夢の逢瀬がかえって現実の不在を際立たせる苦しさを述べている。或本では初句を「我妹子を」とする。
 作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。

 初句「うつつにも」は、現実にも、の意で、三句の「夢」と対をなす。
 二句「今も見てしか」の「てしか」は願望を表し、今すぐにでも逢いたい、の意である。ここで二句切れとなる。
 三句「夢のみに」は、夢の中でばかり、の意である。
 四句「手本まき寝と」は、袖を枕として共寝すると、の意である。
 結句「見るは苦しも」は、夢に見るのは苦しい、の意で、「も」は詠嘆を表す。

たもと:袖、袖口
まく:腕や袖を枕として巻く、共寝する
作者
作者未詳
出典
万葉集
前の歌
み空行く名の惜しけくも我れはなし 逢はぬ日まねく年の経ぬれば
次の歌
立ちて居てすべのたどきも今はなし 妹に逢はずて月の経ぬれば