古典和歌stream

逢はずして恋ひわたるとも忘れめや
いや日に異には思ひ増すとも

歌の意味
逢わずに恋い続けることになっても、忘れることなどあろうか。日ごとにいっそう思いが増すことはあっても。
鑑賞
巻第十二 正述心緒 2882

詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
 逢えないまま恋い続けても忘れることはなく、むしろ日ごとに思いは増すばかりだと誓う歌である。反語と逆接の仮定を重ねて、変わらぬ思いを強く述べている。
 作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。

 初句「逢はずして」は、逢わないままで、の意である。
 二句「恋ひわたるとも」は、恋い続けることになっても、の意である。
 三句「忘れめや」は反語で、忘れるだろうか、いや忘れはしない、の意となる。ここで三句切れとなる。
 四句「いや日に異には」の「日に異に」は、日ごとにいっそう、の意である。
 結句「思ひ増すとも」は、思いが増すことはあっても、の意で、忘れるどころか募るばかりだと強調している。

こひわたる:恋い続ける
作者
作者未詳
出典
万葉集
前の歌
立ちて居てすべのたどきも今はなし 妹に逢はずて月の経ぬれば
次の歌
外目にも君が姿を見てばこそ 我が恋やまめ命死なずは