さ夜更けて妹を思ひ出で敷栲の
枕もそよに嘆きつるかも
- 歌の意味
-
夜が更けて、あの子を思い出し、枕がそよと音を立てるほどに嘆いてしまったことだ。
- 鑑賞
-
巻第十二 正述心緒 2885
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
夜更けに恋人を思い出し、枕が音を立てるほど深く嘆いたことを歌う。枕の立てる小さな音という具体的な描写に、夜の静けさと嘆きの深さが表れている。
作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。
初句「さ夜更けて」の「さ」は接頭語で、夜が更けて、の意である。
二句「妹を思ひ出で」は、あの子を思い出して、の意である。
三句「敷栲の」は、「枕」にかかる枕詞である。
四句「枕もそよに」の「そよ」は物が触れ合う音を表し、枕が音を立てるほどに、の意である。
結句「嘆きつるかも」は、嘆いてしまったことだ、の意である。本巻の第二千八百六十四首と同じ結句であり、女が男を待ちわびて嘆く歌に対し、こちらは男が妹を思って嘆いている。
さよ:夜、「さ」は接頭語
しきたへ:寝床に敷く布、「枕」などにかかる枕詞
- 作者
-
作者未詳
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
恋ひつつも今日はあらめど玉櫛笥 明けなむ明日をいかに暮らさむ
- 次の歌
-
人言はまこと言痛くなりぬとも そこに障らむ我れにあらなくに