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人言を繁み言痛み我妹子に
去にし月よりいまだ逢はぬかも

歌の意味
人の噂がうるさく煩わしいので、いとしい妻に、先月からまだ逢っていないことだ。
鑑賞
巻第十二 正述心緒 2895

詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
 人の噂がうるさいために、先月から恋人に逢えずにいることを嘆く男の歌である。具体的な期間を示すことで、逢えない日々の長さを実感させている。
 作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。

 初句「人言を」は、世間の噂を、の意である。
 二句「繁み言痛み」は、うるさく煩わしいので、の意で、ミ語法を重ねて理由を述べる。本巻の第二千九百三十八首は同じ上二句を女の立場から歌い、男女の対をなしている。
 三句「我妹子に」は、いとしい妻に、の意である。
 四句「去にし月より」は、過ぎ去った月から、先月から、の意である。
 結句「いまだ逢はぬかも」は、まだ逢っていないことだ、の意で、詠嘆を込めている。

ひとごと:世間の人のうわさ
いぬ:過ぎ去る
作者
作者未詳
出典
万葉集
前の歌
聞きしより物を思へば我が胸は 破れて砕けて利心もなし
次の歌
うたがたも言ひつつもあるか我れならば 地には落ちず空に消なまし