うたがたも言ひつつもあるか我れならば
地には落ちず空に消なまし
- 歌の意味
-
よくも平然とそんなことを言っていられるものだ。私であったならば、地面に落ちることもなく空で消えてしまうだろうに。
- 鑑賞
-
巻第十二 正述心緒 2896
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
平然と言葉を口にする相手に対し、自分ならば地に落ちる前に空で消えてしまうだろうと、恋の苦しさの差を訴える歌である。初句の語義をはじめ解釈に諸説のある難解な歌とされる。
作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。
初句「うたがたも」は、きっと、必ず、などの意とされるが、語義には諸説がある。
二句「言ひつつもあるか」は、言い続けていられるものだ、の意で、相手の平然とした態度をいぶかる。ここで二句切れとなる。
三句「我れならば」は、私であったならば、の意である。
四句「地には落ちず」は、地面に落ちることもなく、の意で、露や雪のように消えやすいものに自らをなぞらえている。
結句「空に消なまし」は、空で消えてしまうだろうに、の意で、「まし」は反実仮想を表す。
く:消える、上代の動詞
- 作者
-
作者未詳
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
人言を繁み言痛み我妹子に 去にし月よりいまだ逢はぬかも
- 次の歌
-
いかならむ日の時にかも我妹子が 裳引きの姿朝に日に見む