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ひとり居て恋ふるは苦し玉たすき
懸けず忘れむ事計りもが

歌の意味
ひとりでいて恋しく思うのは苦しい。心にかけずに忘れてしまえるような、よい手立てがあればよいのに。
鑑賞
巻第十二 正述心緒 2898

詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
 ひとりで恋い悩む苦しさに耐えかね、いっそ忘れてしまえる手立てがほしいと願う歌である。忘れたいと願うこと自体が、思いの深さを物語っている。
 作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。

 初句「ひとり居て」は、ひとりでいて、の意である。
 二句「恋ふるは苦し」は、恋しく思うのは苦しい、の意で、ここで二句切れとなる。
 三句「玉たすき」は、たすきを肩に掛けることから「懸く」にかかる枕詞である。本巻の第二千九百九十二首も「玉たすき懸けねば苦し」と同じ枕詞を用いている。
 四句「懸けず忘れむ」は、心にかけずに忘れてしまう、の意である。
 結句「事計りもが」の「事計り」は、方策、手立ての意で、「もが」は願望を表す。本巻の第二千九百八首第二千九百四十九首にも「事計り」の語が見える。

たまたすき:玉で飾ったたすき、「懸く」にかかる枕詞
ことはかり:方策、手立て
作者
作者未詳
出典
万葉集
前の歌
いかならむ日の時にかも我妹子が 裳引きの姿朝に日に見む
次の歌
なかなかに黙もあらましをあづきなく 相見そめても我れは恋ふるか