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いとのきて薄き眉根をいたづらに
掻かしめつつも逢はぬ人かも

歌の意味
ことさらに薄い私の眉を、むなしく掻かせておきながら、逢いに来てくれない人であることよ。
鑑賞
巻第十二 正述心緒 2903

詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
 眉がかゆいのは恋人に逢える前兆という俗信を踏まえ、何度も眉を掻かせておきながら来ない相手を恨む歌である。俗信を用いた軽妙な発想の中に、待つ身のじれったさが表れている。
 作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。

 初句「いとのきて」は、とりわけ、ことさらに、の意である。
 二句「薄き眉根を」は、薄い眉を、の意で、「眉根」は眉のことである。
 三句「いたづらに」は、むなしく、無駄に、の意である。
 四句「掻かしめつつも」は、掻かせておきながら、の意で、眉のかゆみを相手のせいにしている。
 結句「逢はぬ人かも」は、逢いに来ない人であることよ、の意で、軽い恨みを込めている。

まよね:眉
かく:爪などでこする、掻く
作者
作者未詳
出典
万葉集
前の歌
我が恋は夜昼わかず百重なす 心し思へばいたもすべなし
次の歌
恋ひ恋ひて後も逢はむと慰もる 心しなくは生きてあらめやも