いくばくも生けらじ命を恋ひつつぞ
我れは息づく人に知らえず
- 歌の意味
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いくらも生きられないこの命なのに、恋しく思い続けて、私はため息をついている。人に知られないように。
- 鑑賞
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巻第十二 正述心緒 2905
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
限りある短い命を恋の嘆きに費やしながら、それを人に知られぬよう忍んでいる心を歌う。命のはかなさと秘めた恋とが重ねられ、哀切な響きをもつ。
作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。
初句「いくばくも」は、いくらも、の意で、打消と呼応する。
二句「生けらじ命を」は、生きていられないであろう命なのに、の意である。
三句「恋ひつつぞ」は、恋しく思い続けて、の意で、「ぞ」は四句の連体形「息づく」で結ぶ。
四句「我れは息づく」は、私はため息をついている、の意である。
結句「人に知らえず」は、人に知られずに、の意で、倒置によって忍ぶ恋の苦しさを添えている。本巻の第二千八百六十一首第二千九百二十八首にも同じ句が見える。
いきづく:ため息をつく、嘆く
- 作者
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作者未詳
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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恋ひ恋ひて後も逢はむと慰もる 心しなくは生きてあらめやも
- 次の歌
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他国によばひに行きて大刀が緒も いまだ解かねばさ夜ぞ明けにける