おほろかに我れし思はば人妻に
ありといふ妹に恋ひつつあらめや
- 歌の意味
-
いい加減な気持ちで私が思っているのなら、人妻だという女に恋い続けていたりするだろうか。
- 鑑賞
-
巻第十二 正述心緒 2909
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
人妻と知りながら恋い続けるのは、いい加減な思いではないからだと訴える男の歌である。許されない恋であることを承知のうえで、思いの真剣さを強調している。
作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。
初句「おほろかに」は、いい加減に、なおざりに、の意である。
二句「我れし思はば」は、私が思うのならば、の意で、「し」は強意である。
三句「人妻に」は、夫のある女に、の意である。本巻の第二千八百六十六首は人妻の側から言い寄る男を退ける歌であり、立場の異なる歌として対照をなす。
四句「ありといふ妹に」は、そうだという女に、の意である。
結句「恋ひつつあらめや」は反語で、恋い続けていようか、いや本気だからこそ恋い続けている、の意となる。
ひとづま:夫のある女
- 作者
-
作者未詳
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
常かくし恋ふれば苦ししましくも 心休めむ事計りせよ
- 次の歌
-
心には千重に百重に思へれど 人目を多み妹に逢はぬかも