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人の見て言とがめせぬ夢に我れ
今夜至らむ宿閉すなゆめ

歌の意味
人が見て咎め立てをしない夢の中で、私は今夜あなたのところへ行こう。家の戸を閉ざさないでおくれ、決して。
鑑賞
巻第十二 正述心緒 2912

詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
 人目を気にせずにすむ夢の中で今夜訪ねていくから、戸を閉ざさないでほしいと頼む歌である。夢の訪問にまで戸締まりを気遣う発想に、ユーモアと切実さが同居している。
 作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。

 初句「人の見て」は、人が見て、の意である。本巻の第二千九百五十八首も「人の見て言とがめせぬ夢にだに」と同じ上句で歌い出している。
 二句「言とがめせぬ」は、言葉で咎め立てしない、の意である。
 三句「夢に我れ」は、夢の中で私は、の意である。
 四句「今夜至らむ」は、今夜あなたのもとへ行こう、の意で、ここで四句切れとなる。
 結句「宿閉すなゆめ」の「な」は禁止、「ゆめ」は決して、の意で、夢の中の訪問のために戸を閉ざすなと念を押している。

こととがめ:言葉で咎め立てすること
さす:戸を閉ざす
やど:家、住まい
作者
作者未詳
出典
万葉集
前の歌
人目多み目こそ忍ぶれすくなくも 心のうちに我が思はなくに
次の歌
いつまでに生かむ命ぞおほかたは 恋ひつつあらずは死なましものを