古典和歌stream

妹と言はばなめし畏ししかすがに
懸けまく欲しき言にあるかも

歌の意味
妹と呼んだならば無礼で恐れ多い。けれどもやはり、口にかけて呼んでみたい言葉であることだ。
鑑賞
巻第十二 正述心緒 2915

詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
 身分の高い相手を「妹」と呼ぶのは恐れ多いが、それでも呼んでみたい言葉だと、身分差のある恋の思いを述べる歌である。一語に込めた憧れが、慎みと情熱との間で揺れる心を伝えている。
 作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。

 初句「妹と言はば」は、妹と呼んだならば、の意である。
 二句「なめし畏し」は、無礼であり恐れ多い、の意で、相手が身分の高い女性であることがうかがわれる。ここで二句切れとなる。
 三句「しかすがに」は、そうはいうものの、やはり、の意である。
 四句「懸けまく欲しき」は、口にかけて言いたい、の意である。
 結句「言にあるかも」は、言葉であることよ、の意で、「妹」という一語への強い憧れを示している。

かく:言葉に出して言う、口にする
作者
作者未詳
出典
万葉集
前の歌
愛しと思ふ我妹を夢に見て 起きて探るになきが寂しさ
次の歌
玉かつま逢はむと言ふは誰れなるか 逢へる時さへ面隠しする