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終へむ命ここは思はずただしくも
妹に逢はざることをしぞ思ふ

歌の意味
尽きてしまう命のことは、少しも気にかけない。ただひたすら、あの子に逢えないことばかりを思っている。
鑑賞
巻第十二 正述心緒 2920

詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
 命が尽きることは気にかけず、ただ恋人に逢えないことだけを思い悩むと歌う。命よりも逢えない嘆きを重く見る点に、恋の思いの強さが表れている。
 作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。

 初句「終へむ命」は、尽きてしまう命、の意である。
 二句「ここは思はず」は、そのことは気にかけない、の意で、ここで二句切れとなる。
 三句「ただしくも」は、ただひたすらに、の意とされる。
 四句「妹に逢はざる」は、あの子に逢わない、の意である。
 結句「ことをしぞ思ふ」の「し」は強意、「ぞ」は係助詞で、連体形「思ふ」で結び、そのことばかりを思うと強調している。

をふ:終える、命を終える
作者
作者未詳
出典
万葉集
前の歌
ふたりして結びし紐をひとりして 我れは解きみじ直に逢ふまでは
次の歌
たわや女は同じ心にしましくも やむ時もなく見てむとぞ思ふ