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夕さらば君に逢はむと思へこそ
日の暮るらくも嬉しくありけれ

歌の意味
夕方になったらあなたに逢えると思うからこそ、日が暮れていくことも嬉しいのだ。
鑑賞
巻第十二 正述心緒 2922

詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
 夕方になれば恋人に逢えると思うからこそ、日が暮れるのも嬉しいと、逢瀬を待つ喜びを歌う女の歌である。待つ苦しみを歌う歌の多いなかで、明るい期待に満ちている。
 作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。

 初句「夕さらば」は、夕方になったならば、の意である。
 二句「君に逢はむと」は、あなたに逢おうと、の意である。
 三句「思へこそ」は、思うからこそ、の意で、結句の已然形「けれ」と係り結びをなす。
 四句「日の暮るらくも」は「暮る」のク語法で、日が暮れることも、の意である。本巻の第二千九百一首が日の暮れを嘆いたのとは反対に、ここでは日暮れを喜んでいる。
 結句「嬉しくありけれ」は、嬉しいのだ、の意で、逢瀬を待つ喜びを素直に表している。

ゆふさる:夕方になる
作者
作者未詳
出典
万葉集
前の歌
たわや女は同じ心にしましくも やむ時もなく見てむとぞ思ふ
次の歌
ただ今日も君には逢はめど人言を 繁み逢はずて恋ひわたるかも