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ただ今日も君には逢はめど人言を
繁み逢はずて恋ひわたるかも

歌の意味
今日にでもすぐにあなたに逢いたいけれど、人の噂がうるさいので、逢わずに恋い続けていることだ。
鑑賞
巻第十二 正述心緒 2923

詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
 今日にでも逢いたいのに、人の噂を恐れて逢えずに恋い続けていると嘆く女の歌である。逢いたい思いと人目への恐れとの間で揺れる心が、率直に述べられている。
 作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。

 初句「ただ今日も」は、今日にでもすぐに、の意である。
 二句「君には逢はめど」は、あなたに逢いたいけれど、の意である。
 三句「人言を」は、世間の噂を、の意である。
 四句「繁み逢はずて」は、うるさいので逢わずに、の意である。
 結句「恋ひわたるかも」は、恋い続けていることだ、の意である。

ひとごと:世間の人のうわさ
こひわたる:恋い続ける
作者
作者未詳
出典
万葉集
前の歌
夕さらば君に逢はむと思へこそ 日の暮るらくも嬉しくありけれ
次の歌
世の中に恋繁けむと思はねば 君が手本をまかぬ夜もありき