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おのがじし人死にすらし妹に恋ひ
日に異に痩せぬ人に知らえず

歌の意味
人はそれぞれ自分のことで死ぬものらしい。あの子を恋して、日ごとにいっそう痩せてしまった。人に知られることもなく。
鑑賞
巻第十二 正述心緒 2928

詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
 人はそれぞれの理由で死ぬものらしいと述べ、自分は恋のために日ごとに痩せていくと歌う。恋のために痩せ衰えることを、ひそかな死への道筋のように描いている。
 作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。

 初句「おのがじし」は、それぞれに、自分自身のことで、の意である。
 二句「人死にすらし」は、人は死ぬものらしい、の意で、ここで二句切れとなる。
 三句「妹に恋ひ」は、あの子を恋して、の意である。
 四句「日に異に痩せぬ」は、日ごとにいっそう痩せてしまった、の意である。
 結句「人に知らえず」は、人に知られずに、の意で、本巻の第二千九百五首と同じく忍ぶ恋の苦しさを表している。

やす:痩せる
作者
作者未詳
出典
万葉集
前の歌
うらぶれて離れにし袖をまたまかば 過ぎにし恋い乱れ来むかも
次の歌
宵々に我が立ち待つにけだしくも 君来まさずは苦しかるべし