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あぢさはふ目は飽かざらねたづさはり
言とはなくも苦しくありけり

歌の意味
目で見ることには不足はないけれど、手を取り合って言葉を交わすこともないのは、苦しいことであった。
鑑賞
巻第十二 正述心緒 2934

詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
 姿は見られても、手を取り合い言葉を交わすことができないもどかしさを歌う。見ることと触れ合うこととの隔たりに、思うように逢えない恋の苦しさが表れている。
 作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。

 初句「あぢさはふ」は、「目」にかかる枕詞であるが、かかり方には諸説がある。
 二句「目は飽かざらね」は、目で見ることには不足はないけれど、の意とされる。
 三句「たづさはり」は、手を取り合って、の意である。
 四句「言とはなくも」は、言葉を交わさないことも、の意である。
 結句「苦しくありけり」は、苦しいことであった、の意で、見るだけで触れ合えない恋のもどかしさを表している。

たづさはる:手を取り合う、連れ立つ
こととふ:言葉を交わす
作者
作者未詳
出典
万葉集
前の歌
相思はず君はまさめど片恋に 我れはぞ恋ふる君が姿に
次の歌
あらたまの年の緒長くいつまでか 我が恋ひ居らむ命知らずて