恋と言へば薄きことなりしかれども
我れは忘れじ恋ひは死ぬとも
- 歌の意味
-
恋と言ってしまえば、ありふれた浅いことのようだ。けれども私は忘れまい。恋い焦がれて死ぬことになっても。
- 鑑賞
-
巻第十二 正述心緒 2939
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
恋という言葉ではありふれた浅いものに聞こえるが、自分の思いはそうではなく、死んでも忘れないと誓う歌である。言葉と実感との隔たりを意識しながら、思いの深さを強く述べている。
作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。
初句「恋と言へば」は、恋と言ってしまえば、の意である。
二句「薄きことなり」は、浅くありふれたことのようだ、の意で、ここで二句切れとなる。
三句「しかれども」は、そうではあるけれど、の意である。
四句「我れは忘れじ」は、私は忘れまい、の意で、「じ」は打消の意志を表す。
結句「恋ひは死ぬとも」は、恋い焦がれて死ぬことになっても、の意である。本巻の第三千八十首も「恋ひは死ぬとも」と同じ結句で結ばれている。
わする:忘れる
- 作者
-
作者未詳
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
人言を繁み言痛み我が背子を 目には見れども逢ふよしもなし
- 次の歌
-
なかなかに死なば安けむ出づる日の 入る別知らぬ我れし苦しも