古典和歌stream

なかなかに死なば安けむ出づる日の
入る別知らぬ我れし苦しも

歌の意味
いっそ死んでしまえば楽だろう。昇る日が沈む区別もわからないほど恋に沈む私は苦しい。
鑑賞
巻第十二 正述心緒 2940

詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
 日の出と日の入りの区別もつかないほど、昼夜を分かたず恋に沈む苦しさを歌い、いっそ死んだ方が楽だと嘆く。太陽の運行という大きな尺度で、時間の感覚を失った心の状態を表している。
 作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。

 初句「なかなかに」は、かえって、いっそ、の意である。本巻の第二千八百九十九首も同じ初句で歌い出している。
 二句「死なば安けむ」は、死んでしまえば楽だろう、の意で、ここで二句切れとなる。
 三句「出づる日の」は、昇る日が、の意である。
 四句「入る別知らぬ」は、沈む区別もわからない、の意で、昼夜を分かたず恋に沈んでいることをいう。
 結句「我れし苦しも」は、私は苦しい、の意で、「し」は強意を表す。

わき:区別、けじめ
作者
作者未詳
出典
万葉集
前の歌
恋と言へば薄きことなりしかれども 我れは忘れじ恋ひは死ぬとも
次の歌
思ひ遣るたどきも我れは今はなし 妹に逢はずて年の経ぬれば