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思ひ遣るたどきも我れは今はなし
妹に逢はずて年の経ぬれば

歌の意味
思いを晴らす手立ても、私には今はない。あの子に逢わないまま年が過ぎてしまったので。
鑑賞
巻第十二 正述心緒 2941

詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
 逢わないまま年月が過ぎ、思いを晴らす手立てもなくなったと嘆く歌である。同じ型の歌が本巻に繰り返し置かれ、そのなかで時の単位が月から年へと長くなっている。
 作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。

 初句「思ひ遣る」は、思いを晴らす、の意で、本巻の第二千八百九十二首と同じ初句である。
 二句「たどきも我れは」は、手がかりも私は、の意である。
 三句「今はなし」は、今はない、の意で、本巻の第二千八百八十一首の三句と同じであり、ここで三句切れとなる。
 四句「妹に逢はずて」は、あの子に逢わないで、の意で、第二千八百八十一首と同じ四句である。
 結句「年の経ぬれば」は、年が過ぎてしまったので、の意である。第二千八百八十一首第二千八百九十二首では「月」であったのが、ここでは「年」となり、歳月の長さが増している。

おもひやる:思いを晴らす、心を慰める
たどき:手がかり、手段
作者
作者未詳
出典
万葉集
前の歌
なかなかに死なば安けむ出づる日の 入る別知らぬ我れし苦しも
次の歌
我が背子に恋ふとにしあらしみどり子の 夜泣きをしつつ寐ねかてなくは