古典和歌stream

玉梓の君が使を待ちし夜の
なごりぞ今も寐ねぬ夜の多き

歌の意味
あなたからの使いを待った夜の名残で、今も眠れない夜が多いことだ。
鑑賞
巻第十二 正述心緒 2945

詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
 かつて恋人からの使いを待って夜を明かした習いが残り、今も眠れない夜が多いと歌う女の歌である。待つことが身にしみついてしまった寂しさが、静かに表されている。
 作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。

 初句「玉梓の」は、「使」にかかる枕詞である。玉梓は、手紙を運ぶ使者が持った梓の杖とされる。
 二句「君が使を」は、あなたからの使いを、の意である。
 三句「待ちし夜の」は、待っていた夜の、の意である。
 四句「なごりぞ今も」の「なごり」は、ある事が過ぎたあとに残る影響の意で、「ぞ」は結句の連体形「多き」で結ぶ。
 結句「寐ねぬ夜の多き」は、眠れない夜が多い、の意で、待つことが習い性となった寂しさを表している。

たまづさ:「使」にかかる枕詞
なごり:物事が過ぎたあとに残る影響
作者
作者未詳
出典
万葉集
前の歌
人言を繁みと妹に逢はずして 心のうちに恋ふるこのころ
次の歌
玉桙の道に行き逢ひて外目にも 見ればよき子をいつとか待たむ