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海石榴市の八十の街に立ち平し
結びし紐を解かまく惜しも

歌の意味
海石榴市の多くの辻に立って地を踏みならし、歌垣で結んだこの紐を解くのは惜しいことだ。
鑑賞
巻第十二 正述心緒 2951

詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
 海石榴市の歌垣で契りを交わして結んだ紐を、解くのが惜しいと歌う。歌垣は男女が集まって歌を掛け合い、相手を求める行事であり、その場で結ばれた思い出を大切にする心が表れている。
 作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。

 初句「海石榴市の」は、奈良県桜井市にあった市で、歌垣が行われた場所として知られる。本巻の第三千百一首も「海石榴市の八十の街に」と同じ地名と句を用いている。
 二句「八十の街に」は、多くの道の分かれる辻に、の意である。
 三句「立ち平し」は、何度も立って地を踏みならし、の意で、歌垣に加わったことを示す。
 四句「結びし紐を」は、歌垣で契りを交わして結んだ紐を、の意である。
 結句「解かまく惜しも」は、解くのが惜しい、の意で、その時の思い出を大切にする心を表している。

ちまた:道の分かれる所、辻
たちならす:何度も立って地を踏みならす
作者
作者未詳
出典
万葉集
前の歌
我妹子が夜戸出の姿見てしより 心空なり地は踏めども
次の歌
我が命の衰へぬれば白栲の 袖のなれにし君をしぞ思ふ