- 歌の意味
- あなたを恋しく思って私が泣く涙で、白い袖までもぐっしょりと濡れて、どうしようもない。
- 鑑賞
-
巻第十二 正述心緒 2953
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
恋しさに流す涙で袖までぐっしょり濡れ、どうしようもないと嘆く女の歌である。涙に濡れる袖という典型的な表現で、恋の悲しみの深さを示している。
作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。
初句「君に恋ひ」は、あなたを恋しく思って、の意である。
二句「我が泣く涙」は、私が泣く涙で、の意である。
三句「白栲の」は、「袖」にかかる枕詞である。
四句「袖さへ漬ちて」は、袖までもすっかり濡れて、の意で、「漬つ」は水にひたって濡れる意である。
結句「せむすべもなし」は、どうしようもない、の意である。
ひつ:水にひたる、濡れる
- 作者
- 作者未詳
- 出典
- 万葉集
- 前の歌
- 我が命の衰へぬれば白栲の 袖のなれにし君をしぞ思ふ
- 次の歌
- 今よりは逢はじとすれや白栲の 我が衣手の干る時もなき