古典和歌stream

紅の薄染め衣浅らかに
相見し人に恋ふるころかも

歌の意味
紅で薄く染めた衣の色のように、浅く軽い気持ちで逢った人なのに、恋しく思うこのごろであることだ。
鑑賞
巻第十二 寄物陳思 2966

詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
 薄く染めた紅の衣の淡い色を序として、軽い気持ちで逢った人なのに恋しさが募っていることを歌う。浅い出会いが深い恋に変わった意外さが、色の濃淡を通して表されている。
 作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。

 初句「紅の」は、紅花で染めた色をいう。
 二句「薄染め衣」は、薄く染めた衣で、初句とともに色の淡さから「浅らかに」を導く序詞となる。
 三句「浅らかに」は、浅く、軽い気持ちで、の意である。本巻の第二千九百七十首も「浅らの衣浅らかに」と同じ技法を用いている。
 四句「相見し人に」は、逢った人に、の意である。
 結句「恋ふるころかも」は、恋しく思うこのごろであることだ、の意で、軽い気持ちで始まった恋が深まった意外さを示している。

くれなゐ:紅花、またその色
うすそめ:薄く染めること
作者
作者未詳
出典
万葉集
前の歌
橡の袷の衣裏にせば 我れ強ひめやも君が来まさぬ
次の歌
年の経ば見つつ偲へと妹が言ひし 衣の縫目見れば悲しも