紫の我が下紐の色に出でず
恋ひかも痩せむ逢ふよしをなみ
- 歌の意味
-
紫色の私の下紐の色が表に出ないように、思いを顔色に出さずに恋い焦がれて痩せてしまうのだろうか。逢う手立てもないので。
- 鑑賞
-
巻第十二 寄物陳思 2976
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
紫の下紐が人目に見えないように、恋の思いを表に出さずに痩せ衰えていくのだろうかと嘆く歌である。秘めた恋の苦しさが、隠れた紐の色に託されている。
作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。
初句「紫の」は、紫色に染めた、の意で、本巻の第二千九百七十四首と同じ初句である。
二句「我が下紐の」は、私の下紐の、の意で、初句とともに表に見えないことから「色に出でず」を導く序詞となる。
三句「色に出でず」は、思いを顔色に出さずに、の意である。
四句「恋ひかも痩せむ」は、恋い焦がれて痩せるのだろうか、の意である。
結句「逢ふよしをなみ」は、逢う手立てもないので、の意である。
したひも:下着の紐
よし:手立て、方法
- 作者
-
作者未詳
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
高麗錦紐の結びも解き放けず 斎ひて待てど験なきかも
- 次の歌
-
何ゆゑか思はずあらむ紐の緒の 心に入りて恋しきものを