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まそ鏡見ませ我が背子我が形見
待てらむ時に逢はざらめやも

歌の意味
この鏡を見てください、あなた。私の形見を手にしていてくださる時には、私に逢わないことがあろうか、逢っているのと同じなのだ。
鑑賞
巻第十二 寄物陳思 2978

詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
 鏡を形見として男に贈り、それを見るときには私に逢っているのと同じだと語りかける女の歌である。鏡には持ち主の魂が宿ると考えられ、形見として贈る習わしがあった。ここから鏡を詠む歌が続く。
 作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。

 初句「まそ鏡」は、よく澄んだ立派な鏡をいい、「見る」にかかる枕詞であるとともに、形見として贈る鏡そのものをも指している。
 二句「見ませ我が背子」は、ご覧ください、あなた、の意で、「ませ」は尊敬の命令である。ここで二句切れとなる。
 三句「我が形見」は、私の形見を、の意である。
 四句「待てらむ時に」は、仮名の行で「まてらむ」と読み、持っていてくださる時に、の意と解されるが、諸説がある。
 結句「逢はざらめやも」は反語で、逢わないことがあろうか、の意となり、鏡を見ることが私に逢うことになると言い聞かせている。

まそかがみ:よく澄んだ立派な鏡、「見る」などにかかる枕詞
かたみ:思い出のよすがとなる品
作者
作者未詳
出典
万葉集
前の歌
何ゆゑか思はずあらむ紐の緒の 心に入りて恋しきものを
次の歌
まそ鏡直目に君を見てばこそ 命に向ふ我が恋やまめ