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梓弓末はし知らずしかれども
まさかは君に寄りにしものを

歌の意味
行く末のことはわからない。けれども今この時は、あなたに心を寄せてしまったのに。
鑑賞
巻第十二 寄物陳思 2985

詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
 二人の行く末はわからないが、今この時は心をあなたに寄せてしまった、と恋の決意を述べる歌である。ここから梓弓を詠む歌が続く。左注の一本では「梓弓末のたづきは知らねども心は君に寄りにしものを」とする。
 作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。

 初句「梓弓」は、梓の木で作った弓で、弓の端を「末」ということから「末」にかかる枕詞である。
 二句「末はし知らず」は、行く末のことはわからない、の意で、「し」は強意である。ここで二句切れとなる。
 三句「しかれども」は、けれども、の意である。
 四句「まさかは君に」の「まさか」は、今この時、現在の意である。
 結句「寄りにしものを」は、心を寄せてしまったのに、の意である。本巻の第二千九百八十六首第二千九百八十九首も同じ結句で結ばれ、梓弓を詠む一連をなしている。

あづさゆみ:梓の木で作った弓、「末」「引く」などにかかる枕詞
まさか:今この時、現在
よる:心を寄せる
作者
作者未詳
出典
万葉集
前の歌
剣大刀名の惜しけくも我れはなし このころの間の恋の繁きに
次の歌
梓弓引きみ緩へみ思ひみて すでに心は寄りにしものを