古典和歌stream

今さらに何をか思はむ梓弓
引きみ緩へみ寄りにしものを

歌の意味
今さら何を思い悩むことがあろうか。梓弓を引いたり緩めたりするように迷った末に、あなたに心を寄せてしまったのだから。
鑑賞
巻第十二 寄物陳思 2989

詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
 迷った末に心を寄せたのだから、今さら思い悩むことはないと、決心を確かめる歌である。本巻の第二千九百八十六首と下二句がほぼ同じで、梓弓を詠む一連を締めくくっている。
 作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。

 初句「今さらに」は、今となって、の意である。
 二句「何をか思はむ」は、何を思い悩むことがあろうか、の意の反語で、ここで二句切れとなる。
 三句「梓弓」は、「引く」にかかる枕詞である。
 四句「引きみ緩へみ」は、引いたり緩めたりして、の意で、本巻の第二千九百八十六首と同じ句である。
 結句「寄りにしものを」は、心を寄せてしまったのだから、の意で、第二千九百八十五首第二千九百八十六首と同じ結句であり、梓弓の一連を締めくくっている。

あづさゆみ:梓の木で作った弓、「末」「引く」などにかかる枕詞
作者
作者未詳
出典
万葉集
前の歌
梓弓末の中ごろ淀めりし 君には逢ひぬ嘆きはやめむ
次の歌
娘子らが績み麻のたたり打ち麻懸け うむ時なしに恋ひわたるかも