玉たすき懸けねば苦し懸けたれば
継ぎて見まくの欲しき君かも
- 歌の意味
-
心にかけなければ苦しい。けれども心にかけていると、続けて逢いたくなるあなたであることよ。
- 鑑賞
-
巻第十二 寄物陳思 2992
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
心にかけなければ苦しく、かければ続けて逢いたくなるという、思っても思わなくても苦しい恋の矛盾を歌う。たすきを懸ける動作になぞらえ、「懸く」を繰り返す技巧が効いている。
作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。
初句「玉たすき」は、「懸く」にかかる枕詞で、本巻の第二千八百九十八首と同じである。
二句「懸けねば苦し」は、心にかけなければ苦しい、の意で、ここで二句切れとなる。
三句「懸けたれば」は、心にかけていると、の意で、二句と対をなす。
四句「継ぎて見まくの」は、続けて見ることが、の意で、「見まく」は「見む」のク語法である。
結句「欲しき君かも」は、望まれるあなたであることよ、の意で、思っても思わなくても苦しい恋の矛盾を描いている。
たまたすき:玉で飾ったたすき、「懸く」にかかる枕詞
- 作者
-
作者未詳
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
たらちねの母が飼ふ蚕の繭隠り いぶせくもあるか妹に逢はずして
- 次の歌
-
紫のまだらのかづら花やかに 今日見し人に後恋ひむかも